システム導入を失敗しない!導入フローとスケジュール、業務棚卸はどうするか? の編集

2024.01.29 更新

システム導入を失敗しない!導入フローとスケジュール、業務棚卸はどうするか? の編集

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企業を取り巻く環境が急速に変わりゆくなか、競争力を維持するためはもちろん、働き方改革やDX推進も相まって、近年システム導入を検討する企業は多いのではないでしょうか。

一方で、知識がないままシステム導入を進めたことで「自社に合わないシステムを選定してしまった」「予算オーバーが起きてしまった」といった失敗事例も見受けられます。

本コラムでは、システム導入の成功率を高めるために、プロジェクト担当者が知っておきたい導入までの流れ、ポイント・注意点、求められる人材などを解説していきます

さらに、システム導入時には、システムをどう活用するのか、業務棚卸をしておく必要がありますが、失敗してしまうケースも多いのが実情です。

よくある失敗も踏まえて解説します。

システム導入の有用性

システムはさまざまな面で有用です。

多くの観点から事業にポジティブな影響を与えます。

目的を持ってシステム導入するためにも、システムの有用性を正しく理解することは大切です。

ここではいくつかのシステムを例に挙げ、概要に触れながら有用性をお伝えしていきます。

顧客管理システム(CRM)

顧客管理システムは、顧客情報を管理することで「お客さまが何を求めているか」を正確に把握し、友好関係の構築や売上拡大に役立ちます。

近年は消費者の購買行動が多様化し、企業主導の一方的なマーケティングが通用しなくなっています。

このため、顧客を管理しニーズを理解することが重視されるようになり、多くの企業で顧客管理システムの活用が広がっています。

営業管理システム(SFA)

営業管理システムでは成約や売上の管理はもちろん、案件の進捗や商談内容など幅広い情報を管理することで、営業の業務効率化に役立ちます。

情報が網羅され可視化されることで戦略を立てやすくなったり、営業活動の標準化にも役立ったりするため、営業に課題を抱える企業を中心にシステム活用が広がっています。

販売管理システム

販売管理システムは、見積り・仕入れ・出荷・入金確認…と様々なフローを経て行われる「販売」を分析・管理し、ロス・コストの削減などに役立ちます。

製造、小売、飲食、流通など幅広い業界でシステム活用が広がっています。

ERPシステム

ERPシステムは、企業資源(人・物・資金・情報)や、それにまつわる情報を一元管理できるシステムです

先述した顧客管理システム・営業管理システム・販売管理システムの目的が「業務の利便化・効率化」だったのに対し、ERPシステムは戦略立案の材料や内部統制といった「企業や事業の成長・拡大」に役立っています。

フェーズ別に見るシステム導入のポイント

次にシステム導入のプロセスを解説すると共に、プロジェクト担当者が各フェーズで知っておくべきポイント・注意点を押さえていきます。

今回はシステム開発および導入を外注するケースで説明します。

目的定義

システム導入時には「どのような機能が必要か」「仕様はどうするか」といった“要件定義”を行います。

しかしいきなり具体的な内容を詰めるのはハードルが高いもの。

そこでまずは“システムを導入する目的”と“システム化の範囲”を定義するのがポイントです。

目的と範囲を明確に定めることができれば「必要な要件を満たしていないシステムを導入してしまう」「機能を盛り込み過ぎてしまう」といったよくある失敗を避けやすくなります。

課題の整理

次に現行業務のどこに問題があるかを洗い出し、課題を整理していきます。

ここでのポイントは実際に業務に携わっている現場担当者にしっかりヒアリングすることです。

外からでは問題点が見えにくいこともあるため、現場担当者へのヒアリングを通して業務フローにおける課題を明確にさせましょう。

とはいえ、そこで出てきた課題のすべてがシステム導入で解決できるとは限りません。

プロジェクトの担当者はシステムによって課題解決できるものとできないものを見極め、それを現場担当者にも伝え、認識にずれが生じることがないよう注意していかなければなりません。

  • 業務棚卸表を作成してみる

業務フローにおける課題を明確にする際に効果的なのが、業務棚卸表の作成です。

業務棚卸表は現場担当者へのヒアリングを通して、業務を目的別に大分類・中分類・小分類と区分し、時系列に沿って並べることで作成します。

可視化することで業務を漏れなく洗い出すことができ、課題発見がしやすくなります。

従業員によって認識している業務範囲に差異がある可能性も踏まえ、業務棚卸表は複数人に作成してもらうのが望ましいでしょう。

ベンダーの選定

懇意にしているベンダーがない、初めてシステムを導入するという場合にはベンダーの選定を行いますが、システム導入の成功にはベンダーの良し悪しが大きく影響するため、慎重に選定するべきです

ポイントは、“一緒に導入プロジェクトの推進ができるベンダー”を選ぶこと。

ベンダーはシステムのプロですが、発注側の業務内容・課題をすべて把握しているわけではありません。

発注側とベンダーが綿密にコミュニケーションを取りながら進めていく必要があるため、発注側の要望に頷くだけではなく、新しい視点を提案してくれたり正しく指摘してくれたりするベンダーが望ましいと言えます。

複数のベンダーを候補に挙げ、選定を進めていきましょう。

要件定義

ベンダーが決まったら、具体的にシステムの要件を決めていく「要件定義」を行います。

ポイントは、要件が“課題の整理”で洗い出した課題を解決できる内容になっているかを確認することです。

ここで決めた内容をもとに実際のシステム開発・導入が進められていくので、この工程でしっかりとシステムが課題解決につながっていることを確認しておきます。

スケジュール管理

要件定義が完了すると、ベンダー側はシステムの設計・プログラミングなどシステム開発のプロセスに入ります。

開発・導入のスケジュールは要件定義の際に一緒に定めていますので、発注側はそのスケジュール通りに進んでいるかを管理していきます

進捗の確認はもちろん、ベンダーと定期ミーティングを開催し、要件通りに開発されているか、認識のずれなどがないかも確認できると終盤で大きな修正が発生するといったリスクも回避しやすくなり、手順良く進めることができるでしょう。

テスト・試運用

システムが完成したら、テスト・試運用の機会を設けます

システムが要件定義通りに開発されているか、最初に定めた導入の目的に即しているかを確認します。

万が一要件に沿っていない部分があればベンダーに修正を要求できますが、要件定義で定めていないものについては対応範囲外となるため、注意が必要です。

リリース

テスト・試運用を行い問題がなければシステムリリースとなり、実際の業務で導入したシステムを使い始めます。

テスト・試運用を行っていたとしても、リリース直後はバグが多発しやすいもの。

システムが正常に稼働していることが確認できるまでは、ベンダーと連携を取り続ける必要があります。

効果測定・改善・運用保守

システムを導入し一定期間が経ったら「システム導入によって効果が得られているか」「課題解決に向かっているか」などに対して効果測定を行います

稼働している間はランニングコストがかかりますので、もし効果を得られていないようであれば、何が原因かを探り改善していきましょう。

またシステムをより良い状態で活用していけるよう定期的にアップデートなども行います。

Tips:費用対効果を検証する

システム導入も投資の一つです。

そのため導入前には費用対効果の検証が必要です。

検証方法は様々ありますが、近年はPoC(概念実証)という手法が広く使われています。

PoCでは新しい技術やアイデアに対し小規模な試作を行い、効果が得られるかを検証します。

理論的な検証とは異なり、簡易版を実際に作ることでより具体的な検証を行えるのがメリットです。

たとえ効果が得られなかったとしても「システム導入を行うべきではない」という有力な判断材料となります。

PoCに限らず費用対効果の検証を行い、やみくもにシステム導入することがないよう注意しましょう。

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特に見落としがちなのが業務棚卸不足

ここまで、目的や要件の定義、スケジュール管理、ベンダーの選定など、複数のシステム導入のポイントを紹介してきました。

ここまで紹介してきたポイントの中でも、一番見落としがちなのが業務の棚卸不足です。

業務棚卸不足のままシステム導入を進めないことが何よりも重要です。

業務フローを漏れなく洗い出し・棚卸するには?

業務フローを漏れなく洗い出して棚卸し、効率的で有用なシステム導入を行うためには、以下のようなポイントに特に意識することが大切です。

複数の方法で業務を洗い出す

業務を棚卸するためには、まずは既存の業務がどのようなものであり、どのようなフローで行われているかを洗い出さなければなりません。

漏れのない洗い出しをするためには、一つの観点から洗い出すだけでは不十分です。

例えば、現場社員のヒアリング内容から洗い出すだけだと、漏れが発生しやすくなります。

そこでオススメなのが、複数の観点から業務を洗い出す、という点です。

例えば、現場社員に業務をヒアリングする「ボトムアップ型」の洗い出しと並行して、組織の体系から本来どのような仕事を担当しているかを洗い出し、両者を照らし合わせます。

これにより、「現場社員にとっては当たり前になっていて特に洗い出しの項目に上がらなかった定常業務」などが浮かび上がってくることになります。

洗い出した内容を整理し、適切な課題を設定する

業務の棚卸とは、単に業務の内容やフローを洗い出すことではありません。

洗い出した業務内容やフローを根拠にシステムを作っても、うまくいかないことが多くあります。

なぜなら、現場から洗い出された業務フローが「最善のやり方」であるとは限らないからです。

効率を左右する重要なプロセスが抜けていたり、逆に不要なプロセスが混ざっていたりするかもしれません。

このため、適切に業務を棚卸するためには、単に業務を洗い出すだけでなく、それを元に「システムがサポートすべき最善の業務フローはどのようなものか」を定義し、それを実現するための課題を設定することが大切です。

ベンダーと棚卸の内容を共有する仕組みをつくる

適切に業務を洗い出し、整理や課題の設定ができたとしても、それが「関係者全員」に共有されていなければ、業務の棚卸が完了したとは言えません

特に外部のベンダーと一緒にシステム導入を進める場合、社内で認識している課題の解像度に、外部ベンダーの解像度が追いついていないことが多く、プロジェクトに支障が出る可能性があります。

こうしたリスクを避けるためにも、業務の洗い出し、整理の段階でベンダーに同席してもらう、細かく資料を作成して共有の時間を設けるなど、ベンダーと棚卸の内容を共有できる仕組みを作ることが大切です。

【一例】販売管理の業務フローの場合

業務の棚卸の重要性を、販売管理の業務フローを例にとって確認します

業態等によって違いはありますが、一般的に販売管理の業務フローは、①受注の管理、②出荷の管理、③請求の管理、④在庫の管理の4つが該当します。

特にこの中で、出荷先によっては同一企業でも請求書を分ける必要があり、出荷と請求を紐づける課題感が一部の現場社員の中にあったとします。

しかし、それだけを根拠に業務フローを作り、棚卸をしたつもりになってしまうと危険です。

実は請求書に対して高い課題感を抱えている社員よりも、在庫過多に関する課題を抱えている社員の方が多い、というのが後から発覚した場合、システムは多くの人にとってそこまで重要ではないものになってしまいます。

関連記事:販売管理システム導入時に知っておきたい基本と選定のポイント

業務フローが漏れたままシステム化した際のリスク

業務の棚卸が不十分なままシステム化した際のリスクは、大きく分けて2つです。

一つは、システムの要件が固まり実装に動き始めた段階で、大きな手戻りが発生する可能性がある、ということです。

システム要件の根拠となる業務上のフローに明確な抜け漏れがあると要件定義からやり直す必要があるため、大幅なロスとなってしまいます。

もう1つは、致命的な抜け漏れがないままシステムが完成したものの、業務棚卸の段階で本質的な課題を捕らえられていなかったばかりに、あまり需要のないシステムが完成してしまうケースです。

この場合、システムの構築費用と保守費用がかかるわりに、会社に対して良い影響がない、ということになってしまいます。

プロジェクトにおける人材の重要性

外注するケースであっても、発注側が行うべきこと・注意点は数多あります。

それらの対応がプロジェクトの成否に関わることも多いため、システム導入における人材選びは重要です。

ではどんな人物が求められてくるのでしょうか。

プロジェクトを率いる人材

システム導入の主導者は発注者です。

外注する場合でもプロジェクト全体を把握し、ベンダーと円滑なコミュニケーションを取っていくことがプロジェクトの運営効率向上につながっていくため、プロジェクトを率いるプロジェクトマネージャーは欠かせない存在です。

システム導入のプロジェクトマネジメント経験者がいない、ノウハウが社内にないという場合は、外部人材の活用や、ITコンサルティングなどの支援を受けるといったことが必要になります。

発注側とベンダーの橋渡しができる人材

発注側とベンダー側で話し合いがまとまらず、要件定義が難航するというケースがあります。

そうしたトラブルは結果的に発注側の期待とは異なるシステム開発が行われるリスクも招きかねません。

それを避けるためにも、要件をベンダーが理解できる用語へ変換できるなど、発注側とベンダーの橋渡しができる人材がいると安心です。

社内の情報システム担当やSEはもちろん、こちらもITコンサルタントといった外部人材の力を借りることでも対応可能です。

システム導入に専念できる人材

通常業務と並行しながらシステム導入プロジェクトを進めるのは、大きな負担となることがあります。

そのため、システム導入の目的定義~リリースに至るまでの間は、プロジェクトに専念できる人材が確保できるのが理想的と言えます。

それが難しい場合は、通常業務の負担を軽減するといった配慮を行う、導入期間の間だけ外部人材を活用するといった検討が求められます。

スケジュールを管理する人材

先述の通り、システム導入には多数のフェーズがあります。

たとえば、要件定義で発注側の要求と費用の折り合いがつかず落としどころを決めるのに時間がかかった、テスト時にバグが見つかってその対応に予想以上に時間をとられたなど、当初の予定よりスケジュールが遅延するのはよく見られる失敗です。

「管理しなければスケジュールは遅れていく」ということを念頭に入れ、発注マターの遅れはもちろん、ベンダー側のスケジュール管理にも意識を向けられる人材が求められます。

関連記事:DX推進に求めるべき人材像は?職種別に解説

関連記事:DX人材不足の原因と対策 ~「2025年の崖」をどう乗り越えるか?~

人材活用の新しい選択肢

システム導入時にはプロジェクトを率いるプロジェクトマネージャーや、ベンダーと対等にやりとりできるITコンサルタントといった存在が不可欠であることは既に述べた通りです。

自社にそういった人材やノウハウが不足している場合は、外部人材の活用も視野に入れながら導入を検討するのが良いでしょう。

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執筆監修者

記事監修

野村 鉄平

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。

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