フリーランスエンジニアや派遣エンジニアの社会保険加入条件とは?

2024.01.29 更新

フリーランスエンジニアや派遣エンジニアの社会保険加入条件とは?

IT技術を必要とする事業は多く、いまやIT人材の活用と無縁な企業は少ないでしょう。

多くの企業がIT人材の獲得を目指すなか、従来通りの正社員雇用のみではなく、フリーランスエンジニアや派遣エンジニアの活用を検討するケースも増えています。

さて、新しい人を迎え入れるあたり、人事労務担当の方は社会保険加入の対応を行うでしょう。

一般企業に勤める正社員であれば加入対象の方が大半ですが、ではフリーランスエンジニアや派遣エンジニアの社会保険加入条件はどうなっているのでしょうか。

今後フリーランスエンジニアなどの活用に視野を広げるにあたって、社会保険の適用範囲について知っておく必要があります。

(2021年6月時点の情報です)

エンジニアの社会保険加入条件と注意点

社会保険として代表されるのは、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金の4つ。

派遣社員やフリーランスの場合はどういった扱いになるのか、加入条件と共にみていきます。

◇労災保険

労災保険は、労働者が業務中または通勤中に起きた怪我、病気、障害などに対し保険給付を行う制度です。

・加入の基本条件

法人・個人を問わず、労働者を一人でも使用 している場合は適用事業となり、強制加入です。

ここでの労働者とは正社員だけではなくパートやアルバイトも含まれます。

・派遣社員の場合

派遣元企業が労災保険に加入しているため適用対象です。

・フリーランスの場合

フリーランスは個人事業主であり、企業に雇用されていないため対象外に置かれます。

しかし2020年6月には政府が、特別加入制度の対象範囲の拡大検討を発表したため、今後はフリーランスエンジニアも労災保険の対象となる可能性があります。

◇雇用保険

雇用保険は、失業した方や就業訓練を受けている方、お子様を養育するための休業に対し失業等給付・育児休業給付を支給する制度です。

・加入の基本条件

労災保険と同様、労働者を一人でも雇用していれば適用事業となり、以下の条件を満たす労働者がいれば強制加入となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある

・派遣社員の場合

上記2つの条件を満たしていれば加入対象です。

・フリーランスの場合

対象外です。

◇健康保険・厚生年金

健康保険は、会社などで働く人が病気や怪我をした際に医療給付や手当金などを支給する制度です。

厚生年金は国や地方自治体が運営する年金制度の一つです。

・加入の基本条件

以下いずれかの条件を満たす事業所は強制加入の対象です。

  • 製造業、電気ガス事業、物品販売業、金融保険業、媒介周旋業、医療保健業、通信報道業などの事業を行い、常に5人以上の従業員がいる個人事業所
  • 常に従業員を使用する法人事務所(国・地方自治体を含む)

・派遣社員の場合

契約期間が2か月以上の場合、下記の条件のいずれかを満たせば加入対象です。

  • 1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上
  • 1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以下で下記4つの条件をすべて満たす
  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上
  2. 1年以上の雇用が見込まれる
  3. 月額の賃金が88,000円以上
  4. 会社の従業員数が501人以上

・フリーランスの場合

健康保険、厚生年金、いずれも対象外です。

◇社会保険の加入を怠ると罰則も

強制加入の条件を満たしていながら加入対応を怠った事業主には、罰則があります。

労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金いずれも過去2年分の保険料の納付が求められ、また雇用保険、健康保険、厚生年金においては、懲役や罰金が科せられることもあります。

社会保険に入らなくてもいい場合は?

4つの社会保険はさらに2つに分けることができ、労災保険と雇用保険は「労働保険」、健康保険と厚生年金は「社会保険(狭義)」と呼ばれます。

該当する労働者が一人でもいれば強制適用となる労働保険と異なり、社会保険(狭義)は有期雇用者の場合、加入対象とならないケースもあります。

ではどういったときに加入対象外に置かれるのでしょうか。

・雇用契約が2か月を越えない場合

健康保険は健康保険法第三条に、厚生年金は厚生年金保険法第十二条に「二月以内の期間を定めて使用される者は加入対象に該当しない」といった内容の記載があります。

そのため、たとえば短期プロジェクトで一時的に有期雇用のエンジニアを活用する場合、期間が2か月以内であれば加入させる必要はありません。

・年収が106万円を超えない場合

出勤日数や働く時間も関係しますが、従業員が501名以上の事業所の場合、年収106万円を超えなければ健康保険・厚生年金に加入する必要はありません。

事業所の規模によって条件が変わりますので注意が必要です。

・労働時間、日数が正社員の3/4未満の場合

「1日または1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が正社員の3/4未満の場合は健康保険・厚生年金に加入する必要はありません。

また労働時間および労働日数のどちらかのみ超えた場合にも加入義務は発生しません。

入社2~3か月後に加入させる意図とは?

中小企業などで「入社後すぐに加入せずに、2か月~3か月後に加入させる」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

どうしてそのような対応をするのでしょうか。

大きな理由は、入社してもすぐに辞める人がいるからです。

たとえば入社して数日や半月で退職した場合でも1か月分の保険料が発生します。

また保険料のもう半分は労働者負担のため徴収が必要ですが、短期間で退職されると、その分の給与では額が不足し引き落とせない可能性もあります。

その場合は退職者に直接振り込んでもらうといった対応を行いますが、連絡がとれないなどで困難となることもあります。

そうした背景から、初月からではなく入社2か月~3か月後に加入させる企業があるようです。

遅れて加入させる企業の多くは

  1. 2か月の有期雇用契約を結ぶ。この期間は社会保険に加入しない。
  2. 1の終了後、改めて正社員として雇用する。ここで社会保険に加入する。

という方法を取ります。

これは前項で説明した「社会保険(狭義)は雇用契約が2か月を越えない場合は加入しなくてもよい」ことによるものです。

しかし上記の方法でも、2か月の契約期間を「試用期間」とする場合は入社日から加入させなければなりません。

また最初から正社員雇用が前提の場合も、入社日から加入させる必要があります。

社会保険に入らなくてもいい場合は?

2か月ごとに契約すれば加入しなくてもよい?

「社会保険(狭義)は雇用契約が2か月を越えない場合は加入しなくてもよい」とあるため、「2か月ごとに契約更新すれば社会保険に加入する必要はないのでは?」と考える方もいるかもしれません。

答えはノーです。

健康保険法第三条、厚生年金保険法第十二条の「二月以内の期間を定めて使用される者」が指すのは、あくまで2か月以内の期間で終了する契約であり、更新の予定がないものが対象です。

そのため最初は2か月の契約でも、その後さらに更新する可能性がある場合は入社時からの加入が必要です。

また当初は2か月で契約終了予定だったものが「プロジェクトの進捗の都合で契約延長・更新する」となった場合も、最初の2か月を超えた日から加入が必要です。

企業として少しでも費用を抑えたいという考えもあると思いますが、法律を守り、エンジニアが安心して働ける環境を整備する必要があります。

フリーランスエンジニアでも加入できる社会保険とは?

2018年 1月に「モデル就業規則」改正、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定されるなどしたことで、エンジニア職でもフリーランスへの参入や転身の動きが活発化しています。

しかし先述した通り、一般企業勤める方が加入する社会保険は、フリーランスは加入対象外となっています。

ではフリーランスエンジニアが加入できる社会保険にはどのようなものがあるのでしょうか。

◇健康保険

健康保険には大きく2つの種類があります。

・国民健康保険

フリーランスや自営業など企業勤めをしていない人に加入義務がある健康保険です。

市区町村によるものと、国民健康保険組合が運営するものの2タイプがあり、市区町村によるものが一般的です。

国民健康保険組合が運営するものは、医師、建築業界など同じ業種に就く人を会員とする形式。

フリーランスエンジニアは、画面デザインやWeb制作などを業務に含む場合、Webデザイナーなどが所属する「文芸美術国民健康保険組合」に加入できる可能性があります。

・任意継続保険制度の利用

これまで勤めていた会社で加入していた健康保険を継続する方法です。

退職日までに2か月以上加入していれば延長契約が可能で、契約から2年間利用できます。

在籍時は保険料を会社が折半しますが、任意継続となってからは個人が全額負担します。

◇国民年金

国民年金は日本国内に住む20歳以上60歳未満の方はすべて加入の義務があります。

フリーランスに転身する場合は強制加入となるため、厚生年金からの切り替え手続きが発生します。

◇国民年金基金

国民年基金は上記の国民年金に上乗せする形で、任意加入できる年金制度です。

会社員の場合は国民年金・厚生年金に加入していますが、フリーランスの場合は国民年金のみとなり、将来の受給額に大きな差が生じます。

その差を解消するために、厚生年金に相当する国民年金基金が誕生しました。

途中解約はできませんが、将来の年金受給額を増やしたい方は検討の余地があるでしょう。

◇その他

健康保険、国民年金、国民年金基金のほか、フリーランスが加入できる「フリーランス協会」もあります。

活動内容は協会よりますが、キャリアアップ支援や事業支援を受けたり、福利厚生を利用できたりします。

まとめ

一般企業に勤める方が加入する社会保険は、フリーランスエンジニアは加入対象外です。

しかしそれに代わる国民健康保険や国民年金基金といった社会保険、フリーランス協会があります。

また労災保険は対象範囲の拡大が検討されるなど、フリーランスエンジニアがより安心して働ける環境整備が徐々に進んでいることが分かります。

制度が整いフリーランスが活躍しやすい環境になることは、企業にとってフリーランスエンジニアの活用が、より安心で身近になることを指すでしょう。

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執筆監修者

記事監修

野村 鉄平

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。

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