SAP ERPと他のERPの違いは? SAP ERPのメリット・デメリットなどを紹介
ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業経営の基本となる「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元管理し有効活用する経営手法のことです。また最近では一元管理する業務システムのことをERPと呼ぶことが一般的になってきました。
ERPという考えが生まれるまでは、営業部では営業管理システム、経理部では経理システムといったように各部門で独自のシステムを開発し運用するのが一般的でした。しかしそれでは部門ごとの効率化はできても、部門をまたいだ業務は非効率なままです。それをカバーするのがERPであり、一つのシステムにデータを一元管理し全社最適を目指すようになりました。
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SAP ERPとは?
DXを背景にERP導入が注目されるなか、ERPを調べていると「SAP ERP」という単語を目にしたという方がいるかもしれません。SAP ERPはドイツに本社を置く世界最大級のソフトウェア会社、SAP社が提供するERPパッケージの名称です。SAPは「サップ」と一語で発音されがちですが、正しい読み方は「エス、エー、ピー」と個別に発音します。
◇SAP ERPの特徴は?
SAP ERPの特徴は業務サポートの範囲の広さです。4つのモジュール(機能)で構成されており、生産管理や販売管理といった基幹業務システムはもちろん、人事給与、経費精算、プロジェクト管理など幅広い業務の効率化もカバーしています。加えて消費税の設定や伝票の項目といった設定項目が充実しており、「ここまで設定できるんだ」と驚くほど幅広いと言われています。
またSAP ERPはそのものが業務プロセスとなるように開発されており、システム内において不整合が発生しない仕組みです。他社のERPパッケージでは、各機能単位での設計が重視される傾向にあるため、市場の移り変わりや企業成長に伴う業務変化によって不整合が起きることも。この点は他社製品との大きな違いと言えるでしょう。
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SAP ERPのメリット
SAP ERPの魅力について、さらに見ていきます。
◇世界スタンダードERPシステム
SAP ERPは世界スタンダードのERPシステムです。多言語・多通貨対応はもちろんのこと、世界の商慣習・法令への対応も簡単に行えます。事実、世界中で高いシェア率を誇り、世界各国の有力企業・グローバルカンパニーがこぞってSAP ERPを使用しています。SAP ERPは海外拠点の業務の一括管理を可能にし、また各国の有力企業とのビジネス上の会話もスムーズにするため、事業のグローバル化を進めたいと考えている場合は大きな利点となるでしょう。
◇導入期間が短く、価値実現までの時間が早い
従来のようにシステムの実稼働までに年単位の時間がかかるケースは、急速に変化するビジネス環境を鑑みると望ましくありません。SAP社では移り変わるニーズに素早く対応できるクラウドERPを開発しました。また2020年6月にはERPの導入期間の簡素化と短縮を可能にする標準モデル(i-ESM)の提供を開始し、導入から価値実現までのスピードアップを図っています。DXを迅速に進めたいと考えている場合は魅力的に映るでしょう。
◇データ処理の効率化が図れる
SAP ERPでは各モジュール、たとえば販売管理と生産管理の間でデータが常にリアルタイムに連携されます。他社のERPパッケージのなかにはバッチ処理でデータ連携を取る製品もありますが、その場合はバッチ連携がされるまで正しい数字を確認することができず、データ処理が非効率です。SAP ERPであれば販売管理がデータを更新すればすぐに生産管理側でも反映されるため、データの不整合が発生せずデータ処理が効率的に行えます。経営者にとっても業務データが常にリアルタイムで確認できるため、経営戦略における意思決定をスピーディーに行えるでしょう。
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SAP ERPのデメリット
多くの魅力があるSAP ERPですが、事前に理解しておかなければいけないこともあります。
◇費用対効果を生み出せるか正しく検討する
SAP ERPは業務サポートの範囲が広いという特徴があり、その特徴からさまざまな部門を持つ大手企業向けと言われています。部門を細かく分けていない中小企業などでは不要なモジュールが出てきたり、中小企業向けにカスタムすることで追加費用が発生し、結果として導入費用が高額になったりすることも。本当に費用対効果を生み出せるのかを正しく検討する必要があるでしょう。
◇設定が複雑
パッケージ製品ではありますが、インストールしたらすぐに使えるというものではなく、導入企業に合わせた設定が必要になります。設定項目の充実がSAP ERPの魅力である反面、設定が複雑とも言えるでしょう。またSAP製品の導入・開発には独自のプログラミング言語「ABAP(アバップ)」を用います。しかしABAPエンジニアは希少価値が高く社内にいないケースが多いため、導入にはABAPエンジニアのコンサルタント費用もかかってくるでしょう。
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「SAP ERP6.0」のサポートが2027年に終了
さて、SAP ERPについて説明するうえで避けられない話題があります。それは「SAP ERP 6.0」の標準サポートが2027年に終了するという「2027年問題」です。この製品を利用しているユーザーは、サポート終了となる2027年末までに何らかの対応を迫られています。ユーザーがとるべき選択肢は以下の3つです。
◇S/4HANAへ移行する
一つ目の選択肢はSAP社が導入を推奨しているS/4HANAへの移行です。今後もSAP製品を使うことでサポートが受けられるため、SAP ERPとの相性が良い企業にとっては良い選択となるでしょう。
2027年問題の背景には、SAP ERPの機能拡張を繰り返した結果、システムが肥大化しリアルタイム性が次第に失われていくという課題がありました。S/4HANAは肥大化したシステムをスリム化するため、リアルタイム性の懸念を解消します。こうしたメリットがある一方で、移行には導入要件の見直し・再構築作業といった負担が生じます。
◇現行のSAP ERPを継続利用する
二つ目の選択肢は今使っているSAP ERPの継続利用です。標準サポートは2027年に終了しますが、延長保守料を支払うことで2030年末まで製品を使い続けることが可能です。継続利用する場合は、下記を理解しておく必要があります。
・新しい機能やデザインの更新がない
・システムの品質に関する改善がされない
・修正プログラムが提供されない
ほかにもシステム障害で業務が停止するリスクをはらんでいること、2027年問題の背景にあるリアルタイム性の欠如が解消されないという懸念もあります。また保守延長も2030年末までなので、将来的にまた新たな選択をすることになるでしょう。
◇他社のERPパッケージを利用する
三つ目の選択肢は他社のERPパッケージへの切り替えです。その際はシステムをゼロから再構築することになります。システムの再構築を機に大規模なBPRが行えるというメリットがある一方で、新たなERP製品の選定ができる人材の確保が必要になったり、システムをゼロから再構築する大きな作業負担が生まれたりといった懸念点もあります。
いずれもメリット・デメリットがありますが、重要なのは「自社にとってのDX」を定義したうえで最適な選択をすることです。
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まとめ
企業経営の基本となる企業資源「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元管理し有効活用する経営手法をERPと呼びます。また最近では一元管理するシステムをERPと呼ぶことが一般的になりました。DXを背景にERP導入に注目が集まる一方、先んじてERPを導入し「SAP ERP6.0」を利用していたユーザーは、2027年問題への対応を迫られています。
本コラムを読まれている方のなかには、ERPシステム導入を検討しているという方もいるかもしれません。SAP ERPにもメリット・デメリットがあったように、ERPパッケージを選ぶ際にはよく考える必要があります。企業の課題、導入の目的、目指すゴールなどによっても選ぶべきパッケージは変わりますので、自社に合ったパッケージの選定・導入については、高いITスキルを持った人材からサポートを受けるのが望ましいでしょう。
また現在「SAP ERP 6.0」を導入している企業においては、S/4HANAへの移行を選択すると導入要件の見直し・再構築が、他社のERPパッケージへの切り替えを選択するとシステムの全面再構築が発生します。いずれを選択する場合でも、IT人材の活用は欠かせないでしょう。
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「ERPシステム導入を考えているが、なかなかパッケージの選定が進まない」
「2027年問題を受けて対応を検討しているが、何から手を付けたら良いのか分からない」
そんな課題をお持ちの場合は、ぜひ一度ご検討ください。