受発注システムとは?最適な導入の進め方について
新型コロナ禍によりテレワークが一般的になった昨今、受発注システムの導入は、大企業に限らず、中小企業においても、今後さらなる加速が見込まれています。
現に、中小企業庁は2021年1月発表のレポート(※)において、中小企業の受発注システムの導入率に関し、「現在の約2割から、2023年を目途に約5割(調整中)への引き上げを目指す」ことを、今後の取り組み方針として明示しています。
現在、受発注システムの導入を検討されている企業担当者様の中には、「そもそも、自社が導入に値する状況なのかわかっていない」、「標準的な機能を超える社内ニーズがあり、予算内に収まるか心配」、というお悩みを抱えている方も多いと思います。
本コラムでは、今後の導入時の参考となるよう、受発注システムの導入メリット・デメリットをはじめ、システムを導入すべき企業の特徴や、自社向け開発・カスタマイズに適したケースなどにつき、詳しく解説していきます。
出典:「中小企業等の活力向上に関する現状・課題と今後の取組について」(首相官邸ホームページ)
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受発注システムとは?
受発注システムとは、受発注時に発生する一連の業務や取引を効率的に管理するシステムのことです。
これまで人の手を介して行っていた、メール・電話・FAXなどの受発注業務をシステム上で一元管理できます。
電話越しでの注文数の聞き間違い」「FAXの手書き文字が読み取れないことによる誤発注」など人為的ミスを減らすことが可能です。
また、作業ミスの削減は業務の効率化にもつながり、その他業務に人的リソースを割けられることから、コスト削減や事業拡大も期待できます。 受発注システムは、インターネットを通じて「発注側企業向け機能」と「受注側企業向け機能」に分かれています。
かつて受発注システムを利用しているのは大企業がメインでした。現在はクラウドサービスの普及と共に中小企業の利用も増えています。
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受発注システムの基本機能
受発注システムにはさまざまな機能があります。 ここから基本機能について紹介します。
発注書の自動作成・送付
受発注システムは、取引先を選択し発注数や期日を入力してクリックするだけの操作です。
発注書の自動作成・送付が可能なため正しく発注ができます。
従来は発注書を作成し、FAXで送信しFAXの送信が完了するまで待機するのが普通でした。
手動による発注は「時間がかかる」「書き損じや誤読」などのデメリットがありました。
受発注システムの導入は業務の効率化につながります。
マルチチャネル
「マルチチャネル」とは、メール・FAXなど複数の方法で発注できる機能です。
発注方法は画面上で取引先を選び、商品・発注数・納品希望日を入力し、「発注ボタン」を押すだけで完了します。
手作業の場合、取引先の発注方法を確認してから準備して発注するといった手間がありました。
マルチチャネル利用では、取引先の情報を変更するだけで発注方法の変更も簡単にできます。
在庫反映
受発注システムはリアルタイムでの在庫情報の正確な把握ができます。
手動での作業では、在庫を正確に把握できませんでした。このため、過剰在庫や在庫切れが発生し、経営資源の圧迫や商機を失うといった問題がありました。
しかし、受発注システムを導入すれば、在庫を正確に確認できるため、適正在庫の維持が可能です。
在庫数を超える受注を予防できるほか、在庫切れが起きそうな場合はアラームで知らせてくれます。
請求書管理
受注・納品・請求書の発行までが電子化されることで正確な作業が可能です。
物流やキャッシュフローをリアルタイムに把握できるため、顧客の問い合わせにも即座に対応でき、顧客満足度にもつながります。
手作業の場合、納品ミスの問題が発生し顧客の信頼を失うこともありますが、受発注システムは納品書や受領書の履歴が残るため、こうした人為的ミスが起こることはありません。
出荷管理
出荷管理機能により、複数の部門や拠点間で情報共有ができるため、一元管理が可能です。
その結果、注文から納期に合わせた出荷指示に迅速に対応できます。
従来は営業・生産・在庫管理の部門がそれぞれ別個に作業していました。このため、管理者の指示が不適切な場合は現場が混乱し、作業効率が落ちることもあったのです。
受発注システムによって、部門間の連携が可能になるため、受発注から出荷までのフローも最適化できます。
履歴から再発注
受発注システムは注文履歴から再発注できます。
手作業で同じ商品を再発注の場合、同じ作業の繰り返しになるため、手間がかかり効率的ではありませんでした。
再発注機能は注文履歴から個数や納期を変更するだけで済み、作業の手間を省けます。
会計システムなど他システムとの連携
受発注システムは他のシステムと連携できます。
受注管理で登録したデータを他のシステムと連携することができればデータの入力も一度で終わるでしょう。
以前はシステムと連携できず、二重入力や入力ミスの問題がありました。
しかし、他のシステムとの連携により、人為的ミスを減らせるだけではなく、人件費の削減も可能です。
また、作業工数も減らせるため商品が顧客に届くのが早くなり、顧客満足度にもつながるでしょう。
メールや電話、FAXなど、これまで人の手を介して行っていた受発注業務をシステム上で一元管理することで、電話越しでの注文数の聞き間違いやFAXの手書き文字が読み取れないことによる誤発注など、人為的ミスの削減に大きく寄与します。
また、作業ミスの削減は業務の効率化にもつながり、その他業務に人的リソースを割けられることから、コスト削減や事業拡大も期待できます。
システム導入のメリットは大きく、eコマースおよび安価なパッケージ製品の普及もあり、現在、業種・事業規模を問わず、受発注システムを導入する企業が増えています。
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受発注システムの導入のメリット
自社に限らず、取引先も一緒に同じシステムを利用する点は、他のシステムにはない受発注システムの特徴です。
導入に際しては、双方にとってメリットのあるシステムの選択が欠かせないため、以下に、受注側、発注側の導入メリットをご紹介します。
受注側のメリット
・人為的ミスを削減できる
受発注システムは、入力した情報から発注書を作成できるため、人為的なミスを減らせます。
電話による発注は、聞き間違いや伝え間違いといったリスクがありました。
また、FAXは「手書きによる読み間違い」のリスクがあり、メールも「発注情報のメール検索に時間がかかる」といったデメリットがあったのです。
受発注システムは、こうした人為的ミスを防ぐため、誤発注のリスクを減らせます。さらに、発注書の送付前に「発注書確認機能」があるため、データ入力の間違いもチェックできるのです。
・工数を削減できる
受発注システムが大きな効果を発揮するのはFAX送信の場合です。
FAXは、相手が通話中だったり通信回線が混んでいたりする場合、上手く届かず何度も送らなくてはなりませんでした。
また、FAX送信後も電話での確認が必要なため、時間とコストがかかったのです。
受発注システムには「FAXの送信状況を確認できる」「数分おきに再送信する」などの機能があるため、他の作業をしながらFAXの送信状況を確認し対応することができます。
その結果大幅な業務効率化につながるでしょう。
・ペーパーレス化を促進できる
受発注システムにはペーパーレス化の促進につながるメリットがあります。
手作業の場合、紙の納品書や請求書を保管する必要がありました。
紙の納品書は伝票作業で必要な時、探す手間がかかり紛失する可能性もあったのです。
受発注システムは画面ですぐに納品書や伝票を表示できるため、探す手間を軽減できます。紙の書類を保管する必要がなくなるため、キャビネットやバインダーなども不要になり、オフィスを有効に使えるでしょう。
・コストメリットがある
受発注システムにはコスト削減のメリットがあります。
主なコスト削減は以下の3つです。
【人件費】
受発注システムはこれまで手間のかかっていた作業を簡略化し業務の効率化を向上させます。
これまでは「取引先からの対応」「FAX送信」「郵送作業」に多くの人員が必要でした。
受発注システムは物流の工数を大幅に削減できるため、人件費を削減できます。
【郵送費や通信費】
郵送費やFAX送信にかかる通信費を削減できるため、コスト削減につながります。
これまでは帳票には郵送コストが発生し、FAXにはFAX用紙代や通信コストがかかっていました。
受発注システムはペーパーレス化となるため、帳票費が一切かかりません。
【受注ミスや在庫切れによる機会損失】
受発注システム導入による自動化で、ミスを防ぎ商機も得られます。
手作業で受発注をしていた時は受注ミスや在庫切れによる売上損失がありました。
受発注システムは「正確な受注ができる」「在庫切れを防ぐ」などにより、コスト合理化を実現でき、顧客満足度の向上につながります。
・リアルタイムでデータを共有できる
受発注システムのメリットはリアルタイムで情報を共有できることです。
その結果、業務の効率化につながります。以前は電話やFAXで受注して、工場に在庫確認や出荷の指示をしていました。
その後納期の確認や見積書を顧客に提出・確認といった業務フローとなっていたのです。
システムの自動化により、本社・工場は同時に受注データを確認できます。
納期・在庫状況などもすぐに確認できるため、顧客に納期を伝えたり見積もりを送ったりすることもこれまで以上に早くできるのです。
発注側のメリット
・人為的ミスと業務工数を削減できる
前述した受注側のメリットは、発注側にも当てはまります。
システム上で発注業務を行うため、人為的ミスは減り、発注書の到着確認などの手間もなくなるため、業務工数削減にも寄与します。
・時間帯の制限なく発注できる
システム上の専用インターフェースから、24時間いつでも好きなタイミングで発注できます。
受注側の営業時間や担当者の都合に合わせる必要がない点は、メリットの一つです。
・すぐに履歴のチェックができる
発注製品や金額、数量などは都度システム上にデータとして保存されます。
過去の発注履歴をチェックできるため、定期発注業務の時間短縮につながります。
・他の商品もチェックしやすい
システム上には発注先の商品ラインナップが網羅されているため、他の商品をチェックしやすい点もメリットです。
中には、新商品や特価品の案内機能を持つシステムもあり、上手に機能を活用することで、発注コストの低減化も図れます。
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受発注システムの導入のデメリット
最適な受発注システムの導入には、メリットだけでなく、デメリットの理解も重要です。
以下に、受注側、発注側双方に共通するデメリットをご紹介します。
取引先の企業に、事前に同意を取る必要がある
受発注システムの導入時には、これまでの業務フローが大きく変わるため、取引先の同意は必要不可欠です。
電話、FAX、メールなどを用いた業務フローに愛着があり、ネットを介した商取引に慣れていない取引先の場合、システム導入を躊躇う傾向があるため、事前に取引先に相談の上、システム導入を決めるのがいいでしょう。
費用対効果に見合わない場合がある
FAXの注文内容を機器が読み取り、システムに自動反映できる製品など、現在市場にはさまざまなパッケージ製品が販売されていますが、当然、高機能製品は標準品と比較し、費用がかさみます。
また、自社向けにシステムを開発・カスタマイズする場合は、より多くのイニシャルコストが発生します。
そのため、費用対効果に見合う受発注システムの導入には、経営と現場、双方の意見をヒアリングした上で、「必要な機能はなにか」「どんな機能があれば、コストメリットがあるか」を整理・理解することが大切です。
受発注システムを導入すべき企業 受発注システムは現在、製造業や飲食店、商社をはじめ、幅広い業界で導入が進んでいます。
以下いずれかのポイントを満たす企業の場合、大きな導入効果が見込めるため、システム導入の前向きな検討をおすすめします。
取引先が多い企業
取引先が多いほど、取引頻度や取引量が増え、納品書や請求書の作成、管理工数が発生します。
取引先が多い企業は、高い費用対効果が見込めるため、導入を検討すべきだといえるでしょう。
自社の店舗・支社数が多い企業
自社で管理する店舗や支社が多く、システムが未導入の場合、社内の情報共有化は遅れ、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
こちらも、前向きに導入を検討すべきケースの一つです。
担当者のミスがなくならない企業
アナログで受発注業務を行う場合、電話越しでの注文数の聞き間違いや、FAX注文書の読み間違いの発生を完璧に防ぐことは困難です。
業務フローの見直しやダブルチェックの徹底などの防止策を図ってなお、ミスがなくならない場合は、システム導入が最も効果的な施策となります。
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受発注システムの導入方式について
受発注システムの導入方式は以下の3つに分かれ、どの方式を選ぶかで費用は変動します。
費用と期待できる機能を天秤にかけ、導入方式を決定しましょう。
Excelを用いて自社で作成する
受発注業務が小規模かつ煩雑でなければ、Excelなどのツールの作成で事足りる場合があります。
Excelの利用にはライセンス契約が必要となりますが、多くの企業ですでに導入が進んでいるため、無料で導入できるケースがほとんどです。
システム導入よりも、格段にイニシャルコストを抑えることができるのは、Excelを用いるメリットです。
反面、Excelでは基本的に複数人での同時編集ができないなど、使える機能が制限されることがデメリットとして挙げられます。
Excelの導入により、受発注処理が遅延するようであれば、本末転倒です。
ツールの導入で、受発注業務における自社課題の解決が見込めない場合は、自社でのツール作成に固執せず、システム導入への切替えを検討しましょう。
クラウド型/パッケージ型の受発注システムを導入する
・クラウド型
クラウド型のメリットは、インターネット環境さえあれば、誰でもすぐに利用できることと、標準機能がすでにパッケージ化されているため、自社でイチからシステムを開発する必要がなく、イニシャルコストを抑えられることです。
月額基本料が数万円で収まる製品もあり、自社向け開発・カスタマイズと比較し、大きなコストメリットがあります。
デメリットとしては、個別にカスタマイズできる仕様で作られていない製品が多く、自社向けにカスタマイズしづらい点です。
また、クラウド型のサービスはインターネット上で提供されるため、想定外の時期にサービスが終了し、利用できなくなる恐れがあることもデメリットです。 クラウド型の受発注システムの導入に際しては、サポート体制の確認と、サービス終了時の対応を事前に確認しておく必要があります。
・パッケージ型
特定の業種に特化した製品や、他のシステムとの連携が図れる製品など、現在さまざまな種類のパッケージ製品が市場でリリースされています。
幅広い選択肢の中から、自社の課題に沿う製品を選択できるのは、パッケージ型のメリットです。
また、クラウド型と比較し、カスタマイズしやすいのも、利点となります。
一方、カスタマイズを実施しない場合、機能が決まっているため、業務の進め方をシステムに合わせる必要がある点は、デメリットだといえるでしょう。
自社向けに開発・カスタマイズする
市場でリリースされている、クラウド型/パッケージ型の製品に求める機能がない場合、受発注システムの開発方式として、「フルスクラッチ」と「ハーフスクラッチ」の2つのタイプがあります。
・フルスクラッチ
既存のシステムを用いず、自社向けに一からシステムを開発する方式です。
求める機能をシステムにすべて搭載できるメリットがある反面、イニシャルコストは高額になります。
また、一から開発するため、導入期間が長くなるのがデメリットです。
・ハーフスクラッチ
クラウド型/パッケージ型の製品など、既存のシステムを利用し、機能のカスタマイズを行う方式です。
フルスクラッチと比較すると、イニシャルコストを抑えることができるため、早く導入できる点がメリットです。
なお、機能を追加していくほど追加費用が発生するため、結果的にフルスクラッチよりも費用が高くなるケースもあります。
そのため、カスタマイズ領域を最小限に抑える既存システムを選定することが大切です。
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まとめ
受発注システムは、FAXや電話などを利用したアナログ管理と比較し、多くの導入メリットがあること、また、導入を検討すべき企業の特徴やシステムの導入方式などについて、本コラムを通してお伝えしました。
本格的に受発注システムの導入をお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、受発注システムの導入は一筋縄ではいきません。
一つ目の理由として、前述の通り、仮にパッケージ製品を導入しても、取引先の同意を得られなかった場合、自社の希望とは関係なく、アナログでの受発注業務を続ける必要があるからです。
二つ目の理由として、システムを自社向けで開発・カスタマイズすることが決定している場合、相応の事前準備が必要になることが挙げられます。
仮に、外部ベンダーや搭載機能の見極めを誤り、導入を進めてしまった場合、プロジェクトの遅延を引き起こすだけでなく、運用開始後の機能追加などにより、想定外のコストが発生する恐れがあります。
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