テレワーク導入時のシステム整備のポイントについて

2024.01.29 更新

テレワーク導入時のシステム整備のポイントについて

新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークを導入する企業が増えたことから、テレワークの実施率はさらなる上昇が見込まれています。

テレワーク導入時には、ツールやシステム整備が欠かせません。

そこで、導入の流れやツール・システム整備のポイントを解説しています。

 

テレワークの事例は?導入状況について

総務省の調査によると、2019年時点でのテレワーク導入率は20.2%であり、 導入予定を含めると約30%を占め、実施率は年々増加傾向にあります。

また、新型コロナウイルスの影響もあり、テレワークを導入する企業が増えたことから、2020年度の実施率は、さらなる上昇が見込まれています。

( 出典:令和元年通信利用動向調査 (総務省) )

現在、テレワークの導入を検討している企業様も多いかと思いますが、導入時には、ICT環境の整備やセキュリティ対策、勤怠管理システムの構築など、事前に対応すべき点が多岐にわたります。

「テレワーク導入のためシステム整備を予定しているが、なにから手をつければいいか不安」

そのようなお悩みを抱える企業担当者様が多いのが実態でしょう。

 

テレワーク導入のガイドラインとは?

テレワーク導入のガイドラインが定められています。

テレワーク導入のガイドラインとは、厚生労働省によって、テレワークにおける運用の指針が提示されている指南書のことです。

ガイドラインの概要としては、労働時間管理や安全衛生、導入の時の注意点などについて具体的に解説されているものであり、テレワークに関する就業規則やルールを定める時に活用することができます。

現在では、パンフレットやリーフレットなど、わかりやすい形でガイドラインをまとめたものも存在します。

テレワークを導入するのであれば、まずは確認しておくことが重要です。

( 参考:厚生労働省 テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインページ(2022年6月現在))

 

必要なシステム整備(1)ICT環境

パーソル総合研究所が実施した、テレワーク非実施者へのアンケート結果によると、ICT環境の整備状況により、テレワークが進んでいない企業も少なくないことが読み取れます。

( 出典:新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査(パーソル総合研究所))

このため、テレワークの導入に向け、社内制度の構築が終わった後には、ICT環境を整備する必要があり、以下の4つが代表的なシステム方式となります。

システム方式毎に特徴があり、導入の仕組みや費用も異なるため、充分に比較検討の上、最適なシステムを選択しましょう。

 

・リモートデスクトップ方式

社内のPCに、外部のPCからアクセスする方式です。

新規システムを導入する必要がなく、初期費用を抑えることができます。

アプリケーションや認証キーの購入で、必要なICT環境を構築できるため、導入のハードルが低い点はメリットです。

反面、ホストとなる社内PCを起動させ続けなければならない点はデメリットです。

 

・仮想デスクトップ方式

サーバ内にある仮想PCに、外部のPCからアクセスする方式です。

導入後はインターネット環境があれば、場所や時間、端末を問わず、社内と同等のPC環境にアクセスできるというメリットがあります。

ただし、仮想デスクトップを管理する設備が必要となるため、イニシャルコストがかかります。

 

・クラウド型アプリケーション方式

Webからクラウド型アプリケーションにアクセスする方式です。

こちらの方式もインターネット環境があれば、場所や時間、端末を問わず利用可能です。

アプリケーションを利用するため、イニシャルコストは比較的安く抑えることができますが、従量課金など、利用開始後の料金体系は各社異なるため、業者・サービス選定時に注意が必要です。

 

・会社PCを持ち帰る方式

社内PCを持ち出し、VPNなどを経由して社内LANにアクセスする方式です。

VPNは、導入コストが安価ながら、高いセキュリティを実現できる点がメリットです。

また、普段使い慣れたPCを使用できることも魅力でしょう。

ただし、作業履歴やデータが保存されている端末を持ち出すため、紛失や盗難に備え、ログイン認証を数段階設定するなど、強固なセキュリティ対策が必要となります。

 

社員間のコミュニケーションツールも整備

テレワークでは必然的に、上司や同僚と距離が離れた場所で業務を行うことになるため、コミュニケーション不足が発生し、社員の業務効率やモチベーションの低下を引き起こす恐れがあります。

ビジネスチャットやWeb会議システムを活用することで、リモートワーク環境下においても、密度の高いコミュニケーションが可能になります。

ICT環境と併せ、積極的に導入を進めましょう。

 

必要なシステム整備(2)セキュリティ対策

社外環境で、IT機器を利用するテレワークでは、不正アクセスや情報漏洩リスクなどがあり、充分なセキュリティ対策を実施する必要があります。

以下に、効果的なセキュリティ対策をご紹介します。

 

端末管理の実施

ウイルスによる情報漏洩のリスクに対しては、端末管理の徹底が欠かせません。

具体的に企業は、社員に支給しているノートパソコンやスマートフォン(AndroidやiPhone)、タブレットなどのモバイル端末が、常に最新状態にアップデートされているか、定期的な確認が必要となります。

多くの社員がモバイル端末を使用している場合は、複数端末を一元管理できるMDM(モバイルデバイス管理)の導入がおすすめです。

会社方針に沿ったセキュリティ設定ができるだけでなく、リモートロックやGPS探索機能を備えている製品などもあり、端末からの情報漏洩防止に効果を発揮します。

 

ファイアウォールの導入

社外からの不正アクセスやサイバー攻撃に対する防護策として、ファイアウォールの導入が効果的です。

ファイアウォールは、外部と内部のネットワークの境界線で異常の有無を検知し、不正とみなした通信の侵入をシャットダウンすることで、端末への不正アクセスを未然に防ぐことができます。

ファイアウォールが未導入の場合、ウイルス感染やハッキングのリスクが高まり、社内の機密情報が漏洩し、事業に多大な悪影響を及ぼす恐れもあります。

以下のポイントを参照の上、自社に適したファイアウォールを導入しましょう。

 

・セキュリティ強度

ファイアウォールが持つセキュリティ強度は、製品によって異なります。

アンチスパムをはじめとする未知の脅威を検知できる製品から、第三者機関からの認定を受けた高いセキュリティ機能を持つ製品まで、さまざまな製品が市場でリリースされています。

予算に応じて、自社のニーズに沿う最適な製品を選択しましょう。

 

・UTM機能

UTMとは、複数のセキュリティ機能を1つの製品に盛り込んだ製品です。

さまざまなセキュリティ管理を1つのUTMで担えることから、求めるセキュリティ強度に応じて複数のセキュリティ製品を購入する必要がなく、コスト削減や工数削減に寄与します。

UTM機能の有無も、選定の時のポイントとして覚えておきましょう。

 

必要なシステム整備(3)勤怠管理システム

勤怠管理システムは、出勤・退勤時刻の記録をはじめ、遠隔で勤怠管理業務を行えるシステムです。

社員の労働状況を把握・管理し、労働に応じた賃金の支払いは、テレワーク時においても、企業にとっての法令義務であることは言うまでもありません。

なお、勤怠管理システムは、以下の提供形態に分かれます。

それぞれにメリット・デメリットがあるため、特徴を理解した上で、導入を進めましょう。

 

オンプレミス型

オンプレミスとは、サーバやネットワーク機器を自社で購入し、自社内に設置して運用を行うことを指します。

自社の要望に合わせて自由にカスタマイズでき、他のシステムとの拡張性も高く、独自のシステムを構築できる点はメリットです。

一方、自社でネットワーク環境を構築することから、クラウドと比較し、高額なイニシャルコストが発生します。

また導入期間も、数週間から長くて数ヶ月程要するケースがある点はデメリットです。

 

クラウド型

クラウド型の勤怠管理システムの場合、自社でサーバーやネットワーク機器を購入する必要がないため、導入コストを安く抑えることできます。

また、クラウド上のサーバを利用するため、すぐに導入できる点もメリットです。

基本的な機能を搭載したシステムを安く、短期間で導入できる反面、カスタマイズ性に欠ける点はデメリットとなります。

市場でリリースされているクラウド型の勤怠管理システムが自社のニーズに沿わず、自社向けにカスタマイズや開発を実施する場合、エンジニアの確保など、追加の工数・費用が発生する点は念頭に入れておきましょう。

 

テレワークシステムの導入方法や手順

導入を検討する

まずは導入する前にどのようにテレワークを行うのか、基本ポリシーを定めることが良いでしょう。

基本ポリシーでは、誰を対象に、どのような業務範囲で、どのような形態にするのかを考えます。

具体的には以下のような項目が挙げられます。

  • 対象となる従業員、部門
  • 対象となる業務(テレワークで進めやすい業務に限定するか)
  • 実施頻度(週に数回なのか、完全にテレワークに移行なのか)
  • 導入形態(在宅勤務にするか、サテライトオフィスにするか)

しかし、いきなり基本ポリシーを考えるのは難しい場合もあるでしょう。

その場合には、テレワークを導入する目的を考えると良いです。

新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する場合、「非常時の事業継続性の向上」が最重要とされる場合が多いでしょう。

しかし、同時に達成するべき目的を決めることで、基本ポリシーの設定に役立ちます。テレワークを導入する目的としては以下のようなものがよく挙げられます。

  • 非常時の事業継続性の向上
  • 雇用人材の多様化、離職防止
  • 交通費、オフィス賃料などのコスト削減
  • 生産性の向上
  • 企業のデジタル化促進、イメージ向上
  • 従業員の満足度、QOLの向上

上記の中で、どれを優先するのかを決めることで、自然と基本ポリシーの方向性も定まってくるでしょう。

 

現状を理解する

テレワークの導入によって、社内の制度や仕組みが変わる場合もあります。

導入を進める前に、社内の現状を理解しておきましょう。

確認するべき点は以下に挙げられます。

  • 就業規則と勤怠管理制度(始業、終業の時間など)
  • 人事評価制度
  • 各部門のオフィス環境
  • ICT環境(デジタル化の進度)
  • セキュリティ環境やルール
  • 労働組合の考え方

 

必要なツール・システムを調べる

テレワークの導入にはさまざまなツールが必要です。

以下の表に必要なツールについてまとめます。

ツール役割

概要 必要度

Web会議システム

オンラインでの会議ができるシステム

チャットツール

スムーズなコミュニケーションができるサービス

勤怠管理システム

テレワークに対応した勤務時間を管理できるシステム

オンラインストレージ

オンラインで社内のファイルを共有できるサービス
 

電子契約サービス

オンライン上で契約を完結できるサービス

クラウドPBX

会社にかかってきた電話をどこでも取れるサービス

セキュリティソフト

仕事用のパソコンをウイルスなどの脅威から守ることができるソフト

リモートアクセスサービス

会社以外の場所から社内ネットワークに接続できるサービス

IP電話

社用携帯を持っていない人に貸与するに必要なサービス

タスク管理ツール

誰が何のタスクを行っているのかを可視化できるサービス

グループウェア

コミュニケーションや情報共有に必要なソフトをまとめたもの

営業支援システム

営業の効率化が可能なツール

人事管理・評価システム

人事業務の効率化が可能なツール

ペーパーレス会議システム

紙を用いない会議が行えるシステム

 

新体制の構築をする

テレワークを導入・推進するためには、社内体制を確立することが重要です。

経営企画部門や人事部門、総務部門、情報システム部門など、テレワークの導入に関係する部門や、その代表を含めたチームメンバーで社内体制を確立しましょう。

 

社内の決まりを作る

就業規則の変更や、勤怠管理、安全衛生、教育制度など、テレワークの導入によって、さまざまなルールをテレワークを含んだルールに決めなおす必要があります。

先述した社内の現状を理解するのに対して、テレワークに合わせて現状の制度や規定を変更しましょう。

 

環境の整備を行う

テレワークで業務効率を保つためには、テレワークに適した環境を整備することが必要です

例としては、自宅から社内システムに接続できるネットワーク環境や、社内電話のテレワーク対応化、業務のオンライン化が挙げられます。

また、テレワークになることによって情報漏洩やウイルス感染、従業員のトラブルなどのリスクが想定されます。

そういったものに対応できるように、セキュリティ対策や、電子機器が苦手な従業員へのサポートなども欠かせないでしょう。

 

テレワークシステムを導入しないとどうなるのか?

テレワーク

コミュニケーション不足になりやすい

テレワークでは、対面とは違い会議や社員同士のコミュニケーションといったものを取ることが難しくなります。

このため、コミュニケーション不足によって、業務内容の確認が困難であったり、業務進行上のトラブルが発生した時の意思疎通が困難であったりと、業務に支障が及ぶことが考えられます。

そこで、チャットツールやグループウェアといったコミュニケーションを円滑に行えるようにするテレワークシステムは重要度が高いでしょう。

 

業務時間の管理が難しい

テレワークでは、誰が出勤しているのかを確認することが困難です。

勤務時間と勤務していない時間の区別が難しいことから、労働時間が長時間化しやすいです。

また、特に在宅勤務の場合は区別しづらく、勤務の途中でトラブルや子供の世話のような外せない用事のために作業が中断されることもあるでしょう。

このように、途切れ途切れで作業を行っていたりすると勤務時間の管理も難しくなります。

このため、テレワークに適した勤怠管理システムを導入することは、労働時間の公平性、平等性という観点でも欠かせないでしょう。

 

人事が評価しにくい

従業員の人事評価のしにくさも、テレワークに伴う困難だとされています。

勤務状況を直接確認することができず、成果へのプロセスが確認できなかったり、誰がどのような仕事を行っているのかわからず成果の貢献度合いがわからなかったりと、テレワークでは評価の判断基準に欠けます。

この困難を取り払うために、タスク管理ツールや人事管理、評価システムを導入することで、それぞれの成果を可視化することがテレワークの導入に必要です。

 

テレワーク導入支援の補助金はもらえるのか?

テレワークの導入を検討している人の中には、テレワークの導入に伴う補助金を使うことで、テレワークシステムの導入費用を賄おうと考えている人もいるのではないでしょうか。

実際に、テレワークの導入に応じて助成金が出る、働き方改革推進支援助成金という制度が厚生労働省によって支給されていました。

しかし、多数の申請があったため令和2年に新規の申請受付は終了しています。

現在では、人材確保等支援助成金という制度が、テレワークの導入に関する補助金となっているので、そちらを活用すると良いでしょう。

( 参考: 厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内」ページ(2022年6月現在))

 

テレワーク導入で重要なポイントは?

ICT環境の整備には、テレワーク形態に沿ったシステム方式を選択する必要があり、不正アクセスや情報漏洩のリスクを未然に防ぐためには、端末管理の実施およびファイアウォールの導入が必須であること、また、勤怠管理システムの比較・チェックポイントなどにつき、本コラムを通してお伝えしました。

ここまでお読みになり、テレワーク導入までの流れをイメージできた人も多いのではないでしょうか。

 

システム整備にかかる費用や期間の算出はどうしたらいい?

それぞれのシステム方式やセキュリティ対策のイメージがついても、はじめてテレワークを導入する企業担当の人にとって、最適なシステム整備にかかる費用や期間を算出することは、とても困難であると思われます。

なぜなら、システム整備に必要なシステム方式とセキュリティ対策、勤怠管理システムの組み合わせは多岐に渡り、自社のニーズを満たす正解を導き出すには、高度な専門知識と経験を持ったエンジニアが必要になるからです。

安易にシステム整備の導入を進めてしまった場合、セキュリティ対策の漏れや勤怠管理システムの追加カスタマイズなどが発生し、テレワーク導入の遅延につながる恐れもあります。

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さらに、さまざまな業種、従業員数の企業様に対する、プロジェクト実績があるため、業界トレンドや企業規模に応じた、システム方式・セキュリティ対策の提案なども可能です。

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執筆監修者

記事監修

野村 鉄平

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。

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