情報システム部門の役割とあるべき姿、DXを内製化すべき理由と課題

情報システム部門の役割とあるべき姿、DXを内製化すべき理由と課題

日本企業のDXにおける課題、情報システム部門に求められる変化とは。

新聞やニュースでも目にする機会が多いDX。

しかし日本企業はDXの対応が諸外国の企業と比べ、遅れていると言われています。

ではどうして日本企業はDX推進が遅れているのでしょうか

情報システム部門の役割が鍵を握ります。情報システム部門の課題やあるべき姿、本来の役割や組織編成について解説します。

情報システム部門の活用を通して、DX推進を図りたいとお考えの方は、ぜひご覧ください。

日本企業におけるDXの遅れ

日本企業のDX推進の現状

経済産業省は2018年9月に発表した「DXレポート」を通し、DX推進に関する課題や対応策について報告しました。

そこから2年が経った2020年12月に発表された「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」では、DX推進への取組状況について、以下のような記載があります。

「実に全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況であることが明らかになった。自己診断に至っていない企業が背後に数多く存在することを考えると、我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない。」

出典:「D X レポート 2 中間取りまとめ(概要)」(経済産業省)

経済産業省の発表を見ても、日本のDX推進が遅れていることは明らかです。

日本企業のDX推進が遅れる背景

ではどうしてDXが遅れているのか。

理由は日本企業のDXに対する“意識の低さ”と言えるのではないでしょうか。

2020年のDXレポート2では、2018年のDXレポート発表後、多くの日本企業の間でDXが

  • レガシーシステムさえ刷新できれば良い
  • 現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である

という本質的ではない受け取られ方をしたと分析しています。

参考:「D X レポート 2 中間取りまとめ(概要)」(経済産業省)

事実、システムの刷新だけで終わってしまった企業、社内にDX推進の部署はつくったものの経営戦略にまで落とし込めていない企業も多かったのではないでしょうか。

しかし実際はシステムの刷新だけではなく、デジタルによってビジネス全体や企業文化を変革することがDXの本質です。

現在のビジネスモデルの継続を前提としている企業や、一部のシステム刷新・データ分析に留まっている状況は変革への意識が低いと言わざるを得ず、DXが遅れる背景となっています。

情報システム部門は変化が求められている

システムの刷新も含め、デジタル化を進めることは急務です。

それに伴い、情報システム部門はシステムの導入・運用という従来のミッションに加え、新たな役割を担うことが求められています。

従来の情報システム部の役割

新しい役割に触れる前に、これまでの情報システム部はどのような役割を担っていたのかをご説明します。

  • システム企画

会社の経営戦略や事業戦略にもとづいてシステム導入を検討し、案件定義・導入までを行います。

またセキュリティポリシーの策定やITガバナンスへの取り組みを担うケースもあります。

  • システム構築、運用、保守

既存のシステムを、各部門の要望や業務プロセスの変更に合わせてカスタマイズします。

また構築後は、正しく作動させるための運用、システムに問題が発生した場合の保守対応を行います。

  • 社内インフラ構築、運用、保守

サーバーやネットワークの構築・運用・保守、またセキュリティ対策などを実行します。

そのほか社員に貸与するパソコンがすぐに使えるように、事前にネットワークの設定やソフトウェアのインストールを行うのも役割の一つです。

  • サポート、ヘルプデスク

パソコンやシステム使用時のトラブルに関する窓口対応をします。

トラブルに限らず問い合わせを受けたり、社員に社内システムの研修を行ったりもします。

これからの情報システム部に求められる役割

従来の業務に加え、求められる新たな役割は大きく二つです。

  • データ、デジタル技術の活用を推進していく

ビッグデータに着目する企業は多いですが、データを活用してどのようにビジネスを展開していくかを考えることが重要です。

「システムを使ってどう変わっていくべきか」を考え、情報を現場に伝える役割が増えます。

DXに伴いシステムを刷新するといっても、社員の多くは従来のやり方に慣れ親しんでいるため、新しいシステムには抵抗を覚えます。

そこで情報システム部門は事業部門の現場を知り、業務プロセスを理解したうえで、具体的な活用事例を提供し活用を促していかなければなりません。

  • 経営戦略策定から関与していく

経営戦略やビジョン策定の段階から、リーダーシップを発揮していくことが求められます。

従来は決定した戦略に対しシステムを導入してきました。

しかしながらそれでは実現不可能な要望が下りてきたり、手段であったシステム導入が目的と化したりと、DX失敗を誘発しかねないこともあるでしょう。

そのためこれからの情報システム部門は経営戦略策定という上流から入り、IT技術を知るものとしてできることできないことの判断や、DX推進における変革に至るまでのプランを提案していくことが求められます。

これからの情報システム部門は、システムを導入する・安定運用を目指すといった「守り」の体制から、「攻め」の体制へと変わっていく必要があります。

しかし現在のノウハウでそれを行うのが難しいというケースもあるでしょう。

その場合は、業務改革・組織改革におけるITの専門家と協業することが有効的です。

必要性が減る業務も

役割が増える一方で、必要性が減る業務もあります。

そのきっかけとなったのがクラウドの台頭です。

これまではインターネットを利用したサービスを使用する際、自社内にサーバーを構築するケースが主流でした。

しかし最近ではサービス提供者が用意した環境をインターネット回線を通じて利用するケースが増えており、運用・保守業務の必要性が減りつつあります

またソフトウェアについてもインターネット経由でサービスを利用できるSaaSが増加しているため、企業独自でシステムを構築する機会も減っています。

必要性が減るからといって情報システム部門の業務が楽になるわけではありません。

先述したように「デジタル活用の推進」「経営戦略から関与していく」といった質の高い仕事が求められてくるため、それを担える人材かどうかの見極めが必要となってきます。

情報システム部門に求められる変化とは2

情報システム部門は各社個性がある

情報システム部門の役割は、システム導入を検討するシステム企画、それを元にした構築・運用・保守、インフラの構築、社内サポートなど、非常に多岐に渡ります。

そして、それらの機能をどのように担っているかは、会社によって大きく異なるのです。

例えば、システムの企画や運用からサポートまで完全に社内の内製で運用しているパターンもあれば、全て外部の協力会社に委託しているパターンもあります。

また、少数の社内エンジニアが普段は社内のサポート役やシステムの保守を担い、新たにシステムを導入する際には外部会社と協力して進める、というようなパターンも存在します。

このように情報システム部門がどのように構成されているかは各社個性があり、会社の規模や事業の特徴などによっても大きく異なります。

このため、情報システム部門を変化させてDXに対応していきたいと考えても、ベストプラクティスがないのです。

情報システム部門を刷新するためには、「こうした組織がベスト」という答えを求めるのではなく、まずは会社がどのような戦略をとるべきかを考え、そこからブレイクダウンして部門のあり方を考えていくのがよいでしょう。

既存の成功事例をそのまま自社に転用しても成功しないということは、認識しておく必要があります。

では、どのような人材が社内に必要か?

情報システム部門に対して、思考の質が求められていく一方、社内の人材は限られています。

各担当にはどのような役割を期待し、どの場面で社内人材を活用することが、これからの情報システム部門のあるべき姿なのでしょうか。

ソフト面とハード面からお伝えします。

ソフト面(人柄や姿勢)

情報システム部門の人材にスキルや能力だけを求めてもDXの成功はありません。

例えば、以下の資質を持つ人をアサインすることが望まれます。

革新的思考を持つ

従来の情報システム部門は、システムの導入、運用保守をする部門でした。

このため、IT関連の知見があれば、十分にスキルとしては対応できます。

しかし、DXを推進できるような情報システム部門の人材に求められているのは、「革新的思考」です

具体的には、既存の枠組みにとらわれない発想力と、会社にとっての改善インパクトを考えることのできる視座の高さ、この2つをかけあわせたスキルが革新的思考です。

既存の枠組みにとらわれず、どうしたら最も事業成長につながるのか、どうしたら大きな改善インパクトのあるシステム導入ができるのかを前向きに考え、実行することができる人材が求められます。

トレンドをキャッチアップする

2020年代は、第4次産業革命と言われるように、デジタルに関する技術がとてつもないスピードで発展している時代です。

このため、ITスキルの高いエンジニアであっても、過去の知識や経験に頼りすぎる人材だと、時代に乗り遅れてしまう可能性が高まります。

このため、これからの情報システム部門では、常に最新のトレンドをキャッチアップし、そのトレンドに乗ることを厭わない人材が適任です。

特に、最新のトレンドになっている知識や常識が今まで身につけた知識や常識と相反するものであったときに、勇気をもって「アンラーニング」できる人材が求められていくと考えられます。

人を巻き込むコミュニケーション力を持つ

これからの情報システム部門には、ITに関する知見を武器に社内のDXをリードしていく役割が求められます。

このため、進むべき方向を社内の各所に提案、説得し、巻き込みながら協力者を増やしていく、というコミュニケーション力が必要になるのです。

具体的には、DXに乗り気でない部署があった時に、「〇〇部はやる気がない」と否定するのではなく、その部署がどういう仕事をしていて、どういった人々がいるのかをしっかりと理解し、寄り添いながら説得していくことができるような人材が求められていくことでしょう。

ハード面(能力と組織編成)

どんな能力を持ち、どのような役割分担で組織編成をすべきかが重要です。

以下を例にしてみてください。

システム企画担当

DXを進めるためには、自社の事業を理解したうえでITを事業に落とし込める人材が必要です。

そのため現在のシステムを深く知っている社内の人材が担当するのが望ましいでしょう。

また実際にシステム企画を行う際には、現場を知る事業部門の人材と連携しながら進めるのが有効的です。

システム開発、構築担当

必ずしも社内の人材で内製化を図る必要はないかもしれません。

理由としては、外注したほうがコスト効率が良いケースが多いこと、また改修規模が小さい場合は委託契約の一種であるSES契約で進めることも可能なためです。

運用保守担当

クラウドサービスの台頭により、自社で運用保守を行う必要性が減りつつあります

しかし運用コストの肥大化を防ぐためには、運用改善の企画をするなど負荷軽減の確認が必要です。

また社内の人材がシステム設計から確認することで、運用開始後のトラブルを防ぐこともできます。

そのためすべてを外注するのではなく、一部社内に担当者を置く必要があります。

プロジェクトマネージャー

システム導入といったプロジェクトを外注している場合でも、社内外のエンジニアへの適切なディレクションや円滑なコミュニケーションによって作業効率が向上することを考えると、社内の人材がプロジェクトマネージャーを務めることが望ましいでしょう。

現時点でプロジェクトマネジメントを行える人材・ノウハウが少ない場合は、フリーランスを活用したりコンサルの支援を受けたりすることでノウハウを蓄積していくと良いでしょう。

関連記事:プロダクトマネージャー(PdM)の役割とは?キャリアやスキル、今後期待される価値とは

自社システムの責任者

システム導入といったプロジェクトを外注している場合でも、システム開発費や改修費用の高騰を未然に防ぐ目的で、社内の人材が責任者となりシステム全体を把握・管理する必要があるでしょう。

IT人材の不足が叫ばれる今、社内の人材だけではなく外部の人材も活用しながら体制を構築することが有効的です。

情報システム部門の課題

多くの企業が、DXを内製化するべく、情報システム部門の変革に力を入れており、課題にぶつかっています。

DXを推進する「攻め」の部門になるための課題としては、以下のようなものがあります。

デジタル化への拒否反応がある、変化をしない

一つ目は、ITに関する知見が豊富な情報システム部門だからこそ、既存のIT知識を不要とするようなデジタル化の波に対して、拒否反応を示してしまうということです。

例えば、オンプレミスのサーバーで基幹システムを運用してきたエンジニアが、クラウドの導入に対して反対する、といった具合です。

こうした拒否反応は、自分の持っているスキルが不要になるのではないかという変化への恐れから生まれていると考えられます。

要件を適切に整理できておらず本質的な議論が社内でできていない

二つ目は、情報システム部門自体も、DXの本質を見失い、要件を適切に整理できていないケースです。

SaaSなど最新のクラウドサービスを「導入する」ことが目的になってしまっていて、なんのためにそれを導入するのかという視点が欠けているケースです。

このように本質的な議論がされないままDXに関する施策だけが進んでしまうと、結果として失敗に終わることが多く、それによってDXを諦めてしまう要因になります。

企業利益の視点が欠落している

三つ目は、情報システム部門の社員に、企業利益の視点が欠落しているケースです。

本来、営業部門であろうが情報システム部門であろうが、利益を半永続的に出し続けることで存続する会社の一員であり、仕事においては「どうしたら会社の事業が成長し、利益を出せるか」という点を考えるべきです。

しかし、情報システム部門でシステムの運用や保守に従事するうちにそうした視点が欠落していき、自身のITに関する知見を使って社内のイノベーションを批評するだけの評論家になってしまうということがあります。

経営と現場が遠い存在になってしまっている

四つ目は、情報システム部門の現場と、DXを推進したい経営層の距離が遠いという構造的な課題が挙げられます。

経営層と現場の距離が遠いと、経営層の課題感が現場の情報システム部門まで伝わりづらく、DXの必要性が社内に浸透しづらくなります。

また、情報システムに関する知見のある経営層がいない場合、情報システム部門の社員から「現場をわかっていない」と揶揄されてしまうこともあります。

このように、経営と現場が遠い存在になっていると、社内で分断が起こりDXを阻害する要因になります。

「PoC」が根付いていない

「PoC」とは概念実証のことで、小さくPDCAを回しながら物事を進めていくという考え方です。

小さく始めることでリスクを抑えつつもチャレンジができる、というメリットがあります。

しかし、特に大企業の情報システム部門ではこうした「小さいリスク」も許容されないケースが多く、チャレンジのしにくい風土が根付いてしまっていることがあります。

DXは全てを内製化すべきなのか?

DX推進を背景に情報システム部門の役割が広がり、質も求められています。

社内の限られた人材をどう配置していくか、また人材不足をどうカバーしていくかは企業にとって課題となるでしょう。

DXは全て内製化するのが必ずしも正解かというとそうではありません。

企業の持つ課題によっては、社内の人材育成だけではなく、必要に応じて外部人材を活用するということが非常に重要です。

副業を解禁する企業が増えたり、雇用によらない働き方をする人が増加したりするなかで、フリーランスをはじめ専門スキルを持つ外部人材を活用した課題解決は“タレントシェア”とも呼ばれ、近年話題になっています。

フリーランスITエンジニア専門エージェント「HiPro Tech」では、さまざまな分野のスキルを有するITフリーランサーが活躍しています。

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執筆監修者

記事監修

野村 鉄平

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。

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