【生産管理システム】開発の課題と検討すべきポイント、失敗しないための人材選び

2024.01.29 更新

【生産管理システム】開発の課題と検討すべきポイント、失敗しないための人材選び

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「古いシステムとの決別が求められる時代は、すぐそこまで迫っている」

QCD(品質・コスト・納期)で高いレベルを持つ日本の製造業において、これからの成長に生産管理システムは欠かせない存在になるでしょう。しかし、工程ごとにソフトウェアを使い分ける、10年以上も前のシステムを使い続けているなどをきっかけに、システムのブラックボックス化が進んでしまっている企業は、決して少なくありません。そして、属人的になったシステムはDX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせになりやすいともいわれています。

人材不足が徐々に深刻化している現在、製造業のコアとなる生産管理システムの最適化は、企業競争力を大きく左右するでしょう。生産管理システムの課題や注意点を理解したうえで、適切に導入・運用するための人材選びを心掛けることが大切です。

生産管理システムとは?

生産管理システムは、生産工程を見える化し、QCD(品質・コスト・納期)レベルを押し上げていくために欠かせないシステムです。主に生産工程における以下の7つをカバーします。

  • 生産計画
  • 受発注管理
  • 在庫管理
  • 原価管理
  • 工程管理
  • 品質管理
  • 調達、購買管理

導入の目的としては、計画精度の向上、生産量の調整、工程ごとの負荷平準化、利益率の見直し、業務の見える化による現場改善などがあります。特に昨今は製品の高付加価値化が注目されており、それを生み出し続けるための生産性アップに取り組む企業が増えています

ERPとの違い

ERP(Enterprise Resource Planning/企業資源計画)との違いは、その目的にあります。

生産管理システムは生産工程に特化し、利益の最大化を目的としています。それに対してERPはサプライチェーン全体を管理し、会計や人事システムなどの基幹業務を統合したパッケージ製品で、業務全体の改善を図ります。特定業務を見直す生産管理システム、業務全体を見直すERPと切り分けることができます。

MESとの違い

MES(Manufacturing Execution System/製造実行システム)は、工程管理に特化したシステムです。各工程を管理したうえで、機械や設備の動きを把握することに加えて、作業者に適切な指示を出すといったリソース最適化の役割を持ちます。生産管理システムよりもカバー範囲が狭い分、業務の属人化を防ぎ、作業員のノウハウ伝承がしやすくなるメリットがあります。

昨今の生産管理システムにおける課題

経済産業省のDXレポートによると、何らかのレガシーシステムを持つ企業は平均85.6%。その中で製造業は機械器具系で89.2%、素材系で85.7%と平均より少し高い数値を出しています。

レガシーシステム
出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)を加工して作成

 

レガシー化の問題が大きく広まるきっかけとなったのが、経済産業省が警鐘を鳴らした2025年の崖です。古いシステムが残り続けた場合、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が出る可能性を示しています。また、SAP 2025年問題によるERPパッケージの保守サポート終了(現在は2027年まで延長)も大きな問題とされています。

古くなったシステムには、主に複雑化・老朽化・ブラックボックス化といった問題があります。中でも今回はブラックボックス化について詳しく説明します。

ブラックボックス化とは?

長期的にシステムを使い続けることによって、運用が少しずつ属人化していきます。ブラックボックス化はシステムを熟知した担当者の異動や退職をきっかけに、管理方法やカスタマイズの経緯が分からなくなり、一気に内部構造が理解できなくなってしまうことを指します。

ブラックボックス化が巻き起こす悪影響

ブラックボックス化した生産管理システムは、常に問題が発生しているわけではありません。しかし、一度トラブルが起きてしまうと、対応に膨大な時間をとられるリスクがあります。

  • システムがいつまでも復旧せず、発注がストップする
  • 最新の機器との相性が悪く、上手く活用できない
  • システムが足かせとなり、生産現場の自動化が進まない
  • システムの維持や技術者の確保に大幅なコストがかかる

上記の問題には、「内部構造が分からないことで現場に適切な指示ができない」「システムに詳しい技術者が高齢化し、減少する」「システムに割く人材が増え、予算が吸い取られる」といった背景があります。

このようなことから古い生産管理システムは、生産性だけでなく、自動化や省人化、製品の高付加価値化まで影響を及ぼします。したがって、長期的に使用しているシステムを刷新することは、今後の社会情勢への対応や企業成長にもつながるといえるでしょう。

生産管理システムの構築が難しい理由

生産管理システムの構築が難しい理由

企業の生産領域を総合的に管理する生産管理システムですが、他の情報システムと比べて構築が難しいというイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。そこには以下の4つの理由があるといわれています。

機能が多いから

生産領域を幅広くカバーする生産管理システムは、実装できる機能も多種多様となります。とはいえ、多機能になるほどコストは高まり、導入に時間がかかるため、機能は多ければ良いわけでもありません。

また、販売管理システムなど、他のシステムと連携する場合もあります。そのため、自社の課題を洗い出し、どのような機能が必要なのかをきちんと精査することが大切です。

生産方式が違うから

商材によって個別生産、ロット生産、ライン生産といった生産方式が分かれますが、生産方式によって管理方法が異なるため、システムの内容も変わってきます。自社がどのようなスタイルで生産しているかを知ることで、より会社に合ったシステムを構築できるでしょう

生産計画が複雑だから

生産計画の精度アップによってリードタイムを稼ぐことで、品質の向上や事業投資に回せる金額が増えるものの、生産計画をシステムに落とし込むのは難しいともいわれています。それは市場観、販売計画、原価、在庫など、考慮すべき情報の多さにあります。

また、経営戦略によって計画が変わるといったケースもあり、各情報の適切な共有とシステムの柔軟性が求められるでしょう。

システムを有効活用するには、自社の生産管理ロジックを正しく理解し、優先順位を決め、バランスを調整していくことが重要になります

スムーズに開発を進めるための検討ポイント

古い生産管理システムのマイグレーション(移行)や新たに生産管理システムを導入する場合、パッケージにするか、開発会社に依頼するかによって、その後の選択肢も異なります。導入に割ける予算や利用開始時期も関係してくるため、自社の状況に合わせて選んでいく必要があるでしょう。

パッケージを選ぶ場合

主な手法としては、システムを置き換えるリプレイス(移行)があります。

リプレイス(移行)

既存システムを破棄し、開発会社の持つテンプレートを一部カスタマイズする、あるいはクラウドベンダーが提供するSaaS型システムに切り替えます。

業務プロセスやビジネスモデルに合ったシステムを選ぶことで、これまで以上に生産性を向上できるでしょう。また、ゼロから開発するよりも導入コストを抑えることができ、導入までの期間を短くすることが可能です。

開発会社に依頼する場合

主な手法としては、システム全体を作り直すリビルド(再構築)、システムの一部を変更するリライト(書換)があります。

リビルド(再構築)

既存のシステムを破棄し、ゼロからシステムを作り直したうえでデータを移行する手法です。市場の変化によってビジネスモデルを改革する場合などに選ばれます。

システムの性能やRAS(信頼性、可用性、保守性)をとことん追求できる反面、他の手法よりも導入コストがかかるため、投資効果の見極めが重要です。開発プロジェクトが長期化するデメリットもありますが、レガシーシステムから完全に脱却し、現環境に合ったシステムを導入できるでしょう

リライト(書換)

古いシステムはCOBOLなどの開発言語が使われていますが、現在では扱えるエンジニアの希少性が高まっており、使い勝手の向上が難しくなっています。

そのため、より主流の言語に書き換えることで、システム変化による社内の影響を抑えつつ、OS、システム効率、セキュリティ対策に改善を施します。プラットフォームとの連携や新しいビジネスモデルへの対応は難しいものの、現状の操作性を重視したい場合に選ばれます

生産管理システム構築に向けた人材選び

パッケージと開発会社、どちらを選んだ場合であっても、会社の状態からシステムに必要な機能を導き出すことや、社内での円滑なトラブルシューティングを考えると、エンジニアの存在は欠かせないでしょう。ここでは生産管理システムの導入・運用に関わるエンジニアをそれぞれご説明します。

システムエンジニア(SE)

要件定義・基本設計・詳細設計などの上流工程を担当するエンジニアです。システムに対する要求を整理し、システムの仕様を決め、開発チームとのパイプ役も務めます。プログラマを経験している場合が多く、システムの知識やプログラミング技術も豊富に持っています。

インフラエンジニア

ネットワーク、サーバー、データベース、セキュリティの設計・構築・運用を担当するポジションです。システムの運用にはこれらが欠かせず、日々これらを監視し、問題発生時には原因を特定・解消するトラブルシューティングまで行います。

プロジェクトマネージャー(PM)

プロジェクトを統括するポジションです。予算や工数から計画を立て、開発チームを編成し、プロジェクトの進捗・品質の管理や評価を行います。

システム移行の場合は、現状の業務を分析し、効率化・先進化を目的にシステムへの要求を具体化して、パッケージや開発会社の選定を行います。ERPやMESといった生産管理システムの立ち位置や扱い方の見極めといった重要な判断にも関わっていきます。場合によっては業務フローを見直し、ハンディ端末などのデバイスを追加することもあるでしょう。

また、システムのブラックボックス化を防ぐために、ノウハウを蓄積するための体制構築にも貢献できるポテンシャルを持っています。

企業ごとに人員状況が異なるため、プロジェクトを円滑に進めるうえでどのようなエンジニアが必要なのかを知り、求められるスキルを考慮したうえでのチームづくりが大切です。

ハイスキル人材を上手に活用するには?

情報の一元管理、業務の見える化、工程の最適化など、生産管理システムは企業のQCD(品質・コスト・納期)を高めるうえで欠かせないシステムです。そのシステムの長期使用には技術的な障害が生まれる、ブラックボックス化によるトラブル発生といったリスクがあるため、定期的な刷新が必要でしょう。

生産管理システムは製造業のコアとなるため、将来的なDX推進を考慮しても、社内にノウハウを蓄積する人材の存在は不可欠です。しかし、生産管理システムの導入には会社の生産スタイルを正しく理解し、システムの機能を取捨選択していく専門的な知識が求められます。

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執筆監修者

記事監修

野村 鉄平

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。

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