システムエンジニア(SE)を採用・外注する前に把握したい4つのポイント!仕事内容や給与水準などを解説
スマホの処理能力の向上、次世代通信規格(5G)の誕生、APIエコノミーの台頭(デリバリーサービス、銀行など)といったさまざまな要素が重なり、アプリで実現できる領域は着実に広がっています。それに伴って、「新規事業や業務効率化に向けたビジネスアプリを開発したい」と考える企業も増えているでしょう。その開発プロジェクトの中で重要なポジションとなるのが、システムエンジニア(SE)です。
しかし、システムエンジニア(SE)は企業規模やプロジェクト規模によって役割が異なる場合もあり、「どこまで業務をお願いしていいか分からない」「給料や報酬水準の設定が分からない」「スキルレベルが経験年数だけでは十分に理解できない」という方も多いのではないでしょうか。
システム開発の世界では、システムエンジニア(SE)の他にもデジタル人材がおり、それぞれが別の役割を持っています。採用や外注を検討する前に、システムエンジニアの役割やスキルを理解し、プロジェクトに最適なエンジニアを迎え入れましょう。
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システムエンジニアとは?
システムエンジニア(SE)は、システム開発において重要な役割を担っています。クライアントと現場の橋渡し役として、課題や要望を適切にヒアリングし、システムに必要な機能を精査したうえで、設計書に落とし込んでいくのが、システムエンジニア(SE)の主な役割です。
プログラマー(PG)との違い
プログラマー(PG)との大きな違いは、担当する領域にあります。プログラマー(PG)がプログラミング言語を使って実際にシステムを形作るのに対して、システムエンジニア(SE)の主な仕事はクライアントとシステムの実装機能を話し合い、現実的な落としどころを決める折衝業務と、プロジェクトを円滑に進めるための管理業務の2つです。
厳密にいうと、システムエンジニア(SE)はプログラミング工程を担当しません。しかし、プロジェクト規模によってはプログラマー(PG)が不在の場合もあり得るため、その際はシステムエンジニア(SE)がプログラミングを代行することもあります。
システムエンジニアの仕事内容
システムエンジニア(SE)の仕事を理解するために、まずシステム開発プロジェクトにはどのようなプロセスがあるかを見てみましょう。システム開発には、主に6つのプロセスが存在します。
- 要件定義
- 基本設計
- 詳細設計
- プログラミング
- テスト(確認・評価・負荷)
- 運用/保守
このうち、システムエンジニア(SE)が担当するのは、上流工程と呼ばれる「要件定義から詳細設計まで」の業務領域になります。ユーザー企業の社内SEになると、システム企画やベンダー管理なども業務に加わり、内製の際にはプロジェクト次第で全工程を担当する可能性もあります。開発するシステムはプロジェクトごとに異なり、Web系・業務系・組込系と多岐に渡ります。
要件定義
クライアントの要望を開発者の視点から考え、システムに必要な機能を整理する工程です。具体的には必須要件と希望要件を明確化し、開発工数の見積もりを行い、要件定義書にまとめます。ときには全ての要望を実装することが難しく、優先順位をつけて取捨選択する場合もあります。要件定義の目的は認識のすり合わせであり、対クライアントだけでなく、開発担当者間でも認識の相違がない状態にするために、曖昧な箇所をなくしていく作業です。
基本設計
要件定義が実装する機能を決めるのに対して、基本設計はシステムの仕様を決める工程です。機能の目的、表示する情報やレイアウト、遷移の仕方といった全体観を整理します。クライアントが確認することも多いため、何が(What)、どのように(How)などが分かるように内容をまとめていきます。
近年ではアジャイル開発でプロジェクトを進めることも増えてきているため、実際にシステムを開発しながら詳細を詰めていく場合もあります。
詳細設計
基本設計で決められた動きを、プログラマー(PG)向けに整理する工程です。各機能の処理内容やフローチャートを記述し、画面や帳票の細かな説明を入れ込みます。詳細設計がクライアント向けなら、詳細設計は開発向けに行う作業です。
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エンジニアの給与水準は?
厚生労働省が公表した調査結果によると、2019年のシステムエンジニア(SE)の平均年収は男女計で約568万円(※1)となっています。日本全体の平均年収は436万円(※2)のため、平均よりも高い給与水準です。
※1 出典:令和元年 賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
※2 出典:令和元年分 民間給与実態統計調査(国税庁)
この背景には、主に2つのポイントがあります。
エンジニアの深刻な人材不足
2019年に経済産業省が公表した試算結果では、エンジニアは不足傾向にあります。2020年時点で約30万人、2030年には最大で約79万人にまで達する見込み(※3)です。開発会社(ベンダー)だけでなく、ユーザー企業もエンジニア獲得に踏み切った結果、採用競争はこれまで以上に苛烈さをもっています。
エンジニア不足への対策として、近年ではノーコード開発やAIでの代替が注目されていますが、成果を実感するには時間がかかるでしょう。プログラミングなしでWebサービスやソフトウェア開発ができる「ノーコード開発」はまだまだ実現できることの範囲が狭く、ECやキャンペーンサイトといった特定領域での活用が中心です。AIによる代替も定型業務に留まっており、構想や環境構築はエンジニアが担っています。まだまだエンジニアの仕事がなくなることはないでしょう。
また、大学ではここ数年間で専門の学部が続々と新設されています。「C言語」や「Java」に加えて、AI・IoT領域でも使われる「Python」を勉強・習得する学生も増えてきており、今では新卒でエンジニアを採用することも珍しくなくなりました。とはいえ、学生の多くは現場未経験のため、即戦力の採用においては、より優秀なエンジニアを獲得するために、給与を平均以上に設定する企業も増えてくるでしょう。
ICT技術の急速な進歩
国内に大きな衝撃を与えた2008年のiPhone日本上陸から10年弱の月日が経った現在において、ここ数年の技術進歩には目を見張るものがあります。デバイスの高性能化、アプリの多様化、第四次産業革命によるAI・IoTの台頭、さらに直近ではテレワークによる就業環境の変化もあって、エンジニアの活躍範囲は年々広がっています。
これに伴い、エンジニアに求められるスキルも多様化・高度化しており、エンジニア自身も過酷な環境下で研鑽を積んでいます。IT業界の目まぐるしい変化に付いていけず、転職の道を選ぶエンジニアも少なくありません。今では獲得に向けて年収1000万円以上を提示する企業も出てくる(※4)ほど、上級スキルを持つエンジニアの存在は希少となっています。
※4 出典:我が国におけるIT人材の動向(経済産業省)
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システムエンジニアに求められるスキル
先述ではエンジニアの世界でスキルの多様化・高度化が進んでいるとご紹介しましたが、システムエンジニア(SE)に限った話では、大枠として主に4つのスキルが重要とされています。
ヒアリングスキル
クライアントや社内で抱えている悩みや不満をただヒアリングするだけでなく、ユーザーの置かれている現状を正しく理解・分析し、潜在的な課題を特定していくことが求められます。システムに関する専門知識に加えて、状況を把握・整理し、課題とシステムを結び付け、関係者が分かりやすいように言語化するといったことも重要となるでしょう。
コミュニケーションスキル
要件定義の段階でクライアントの要望・本音を引き出せなかった場合、開発スタート後に予期せぬ機能追加を求められる、あるいは認識の相違部分が大きければシステムを作り直すといった工数が発生し、プロジェクトに支障をきたします。
また、システム開発には複数のエンジニアが関わるため、プロジェクトを円滑に進めるためには、メンバーとのコミュニケーションが欠かせません。意図通りにプログラミングが行われているか、スケジュールに遅延はないかなど、プロジェクトを主導する立場としての動きが求められます。
開発スキル
本来であればプログラミングの工程はプログラマー(PG)が担当しますが、プロジェクト規模によってはシステムエンジニア(SE)がプログラムを書く場合もあります。プログラミングを担当しない場合でも、プログラマー(PG)に指示を出したり、あがってきたものをチェックするための基礎知識は必要です。
また、ICT技術は急速に進歩しており、「プログラミング言語のトレンドが切り替わる」「新しいシステム開発の手法が生まれる」など、変化の激しい業界です。そのため、クライアントの要望を最適なシステムに落とし込むためにも、最新技術のキャッチアップは重要といえるでしょう。
マネジメントスキル
プロジェクトを円滑に進める立場として、システムエンジニア(SE)はクライアントと現場の間に立って調整を行い、納期に合わせてプロジェクト全体を管理する必要があります。綿密に計画を立てたとしても、当初の予定通りに進まないことは珍しくありません。現場のエンジニアと連携しながら、状況に応じた対処が求められます。
大規模なプロジェクトの場合、複数のチームが編成され、それぞれのチームを別々のシステムエンジニア(SE)が指揮することもあり得ます。1つのチームでも業務が遅延すれば、プロジェクト全体に影響が及ぶため、自チームの管理と他チームとの連携を考えるスキルが重要とされます。
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国家資格から分かるエンジニアのスキルレベル
エンジニアを採用する、あるいは業務を外注するうえで、人柄や価値観はもちろんですが、何より気になるのは「どれほどのスキルレベルを有しているか」ではないでしょうか。経験年数やプロジェクトの規模で大よその輪郭は見えてくるものの、実際の業務経験が不透明なため、「求めているスキルレベルに合致しているか」不安になる方も多いと思います。
そのうえで1つの判断基準として有効なのが資格です。とはいえ、エンジニアの資格は意外に幅広く、新しい資格も続々と誕生しているため、どの資格がどのくらいのレベル感なのかまでは分からない方もいるでしょう。
そこで今回は、経済産業省が定めたITスキル標準(ITSS)に基づいて、主な国家資格のスキルレベルをご紹介します。ITスキル標準にはレベル1~7まで存在しますが、レベル5~7が成果(実績)ベース、かつ業務経験などを判断軸としているため、本コラムではレベル1~4までに該当する国家資格を解説します。
ITパスポート試験
IT業界の入門的な国家資格であり、その名の通りIT業界で必要な最低限の知識を有している証明(パスポート)の役割を持っています。2019年の合格率は54.3%で、学生のうちに取得する方も多い国家資格です。ITスキル標準はレベル1で、「最低限求められる基礎知識」に位置付けられています。
この資格を持っていることで、ビジネスにおいてデジタル界隈で利用される共通言語が一定理解できる状態になります。
基本情報技術者試験(FE)
IT技術者の登竜門として設置された国家試験で、デジタル技術を業務で活用するための基礎的な知識が求められます。2019年の合格率は25.7%と難易度が高いですが、平均応募年齢は26歳と、比較的若い方のチャレンジが多いようです。ITスキル標準はレベル2で、「基本的知識・技能」を有していることになります。経済産業省の資料では、試験対象者を「IT業界での就業前~就業2年目」までを位置付けています。
この資格を持っていることで、情報技術に関する基本的なスキルを有したうえで、上位者の指導のもと、システムの設計・開発・運用、情報戦略に関する予測・分析ができる状態になります。
応用情報技術者試験(AP)
エンジニアとして基礎的な知識を活かし、応用力の習得を目指すための国家資格です。2019年の合格率は22.3%とやはり難易度が高く、平均応募年齢は31歳となっています。ITスキル標準はレベル3で、「応用的知識・技能」の資格に該当します。経済産業省の資料では、試験対象者を「3~5年程度のデジタル実務の経験者」を位置付けています。
この資格を持つエンジニアは、通常のエンジニアよりもシステム開発やIT基盤構築といった幅広い領域で、クライアントの課題に合わせた対応力を持ち、高度なパフォーマンスを発揮できる人材といえます。
プロジェクトマネージャ試験(PM)
高度IT人材として活躍するための資格の1つであり、システム開発におけるプロジェクト全体を計画し、人材や予算の確保から、スケジュール・品質管理まで、プロジェクトの全てを統括する能力が求められます。2019年の合格率は14.1%と低く、合格が難しい資格といえるでしょう。ITスキル標準はレベル4で、「高度な知識・技能」の資格に該当します。
システムエンジニア(SE)の上位職であるプロジェクトマネージャ(PM)が有していることの多い資格です。
ITストラテジスト試験(ST)
高度IT人材として活躍するための資格の1つであり、ICT技術を駆使してビジネスモデルの改革・高度化・最適化といった戦略面での提案・推進が求められます。2019年の合格率は15.4%と難しい資格であり、合格者は758名となっています。ITスキル標準はレベル4で、「高度な知識・技能」の資格に該当します。
プロジェクトマネージャ(PM)の上位職であるITコンサルタントが有していることの多い資格です。
※出典:情報処理技術者試験の現状と課題(経済産業省)、AI人材育成の取組(経済産業省)
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最適なエンジニアを確保するために
システム開発プロジェクトには、主に上流と下流の工程があり、システムエンジニア(SE)が担当するのは上流工程になります。キャリアパスとしてはプログラマー(PG)→システムエンジニア(SE)→プロジェクトリーダー(PL)→プロジェクトマネージャ(PM)→ITコンサルタントと上がっていくことが多いですが、設計から開発・運用まで全行程を手掛けるフルスタックエンジニアの道を選ぶ方もおり、柔軟なキャリアが描けるのも1つの特徴です。
しかし、デジタル人材は不足傾向にあり、経済産業省の試算結果を見ても、採用競争は激化していくことが予想されます。近年はジョブ型雇用が注目されていることもあり、プロジェクト頻度の低い企業や1プロジェクトの期間が長い企業にとっては、正社員としてエンジニアを雇用する以外に、プロジェクト単位で人材を確保するという選択肢もあります。特にシステムエンジニア(SE)はプロジェクトごとに仕事内容が異なるケースも多いため、求めるシステムエンジニア(SE)の定義も自ずと変わってくるでしょう。
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